今週のお題「自分にご褒美」
『ご褒美で自分に物を買うことはしないかもしれません』
『あなたには欲しい物がないのですか?』
『いえ、そうではありませんが』
『物ではなく体験を買うほうが重要ということでしょうか?』
『傾向としてはそうですが、やはりそれとも違います』
『聞かせていたただけますか?』
『つまり、買う理由にご褒美という理由付けをしなくなった、あるいは昔からしてなかった、ということかもしれないのです』
『躊躇せずに欲しいときに買えるなら羨ましい話です』
『そんな恵まれた話ではないですよ。小さいときには親に物を買ってとせがんだことはありますし、学生時代には貯めたアルバイト代をはたいて高額のものを買った事もありました。しかも不必要なものを。大人になって生計を自立させてからも同様です。ただし、どれも手が届く範囲のものに過ぎません、結局は。』
『それはどういう解釈をしたらよいのでしょう?』
『あくまでも私の考えではありますが』
『どうぞ聞かせてください』
『これは、あくまでも私の考え・捉え方ですが、何かをクリアしたらそのときはこれを自分に許そう、という考え方をしないのかもしれない。そんな副次的な目標のことを念頭にして計画的に何かを成し遂げる意味を感じません。もし何かをやり遂げたのなら、それ自体で満足するんじゃないかと思います。私はややこしい考え方ができないので』
『高いケーキが食べたいけれど、次のテストをパスするまでは我慢するというようなことは』
『たとえば、高いケーキを買いたいとします。石鹸程度のサイズしかないのに1万円するような。若い頃の私なら高いなら諦めます。わざわざ頑張って食べようとは考えません』
『テストにパスしてもしなくても』
『誰かがプレゼントしてくれれば喜んでいただくかもしれませんがそんなことはありません』
『そうですね』
『しかし、気づくとそのケーキがべつに高いとも思わなくなる日がきます。毎日買うなら別ですが、気まぐれに一度買う程度であれば』
『そしてあなたは一万円のケーキを買う』
『はい。私はケーキを買います。でもそれはご褒美なのかと言われると違うと思います。買えるから買っただけで、それ以上でもそれ以下でもありません。例えばの話です』
『ええ』
『ですから、もし買いたいものがあるとき、それは単に買うかどうかということです』