真夜中の氷菓

今週のお題「好きなアイス」

 

 

 

「熱帯夜、夜中にハッと目がさめたときに、うまくついていけない感覚になることないですか? そういうときに冷凍庫からアイスを出して食べて正気を保ちます」

 

「なにそれ」

 

「唐突に放り出されてしまって、その唐突感にうまく馴染めないときがあります」

 

「それは悪夢にうなされていたということ?」

 

「そういうわけではないけれど、夢の中で異なる記憶が混ざり合いながら場面展開していることに頭の整理が追いつかない焦りみたいなもんだと思います。しかも目が冷めて突如打ち切りになってしまって総括できないまま。焦っていた私の気持ちはなんだったんだろという。そして呆然となるんです」

 

「へえ」

 

「なんか最近は前よりもカオスへの耐性が弱くなったんじゃないかと感じたりします。前はそんな風に感じることはなかったのに。夜中に目がさめること以外にも、日常生活でもそんな風にいちいち気が滅入ることが多くて。雑然としてものがストレスだったりします」

 

「気のせいではないの?」

 

「そうかもしれません。夜中に目が冷めたときはアイスを食べれば正気を保てるんですから、きっとその程度のことですよね。 ちなみにアイスといっても、アイスクリーム類というよりは、氷菓が多いですが」

 

「氷と糖液のかたまりのおかげ」

 

「そうですね」

 

「クールダウン。一種の冷却装置」

 

「いま、ふと思い浮かんだんですが、エネルギーだなって」

 

「アイスが?」

 

「アイスって、製造して、店に陳列されて、私が自宅で冷凍庫で保管という一連の流れで電力を消費しているじゃないですか。それらのエネルギーがなければ存在しえないわけですよね。日本の場合、電力大半が石炭とLNGによって供給されています。割合は少なくても自然エネルギー原子力、も含みます」

 

「つまり、アイスを食べているけれど、それはエネルギーを消費しているのだと」

 

「ええ、主に石炭やLNGを。そのおかげで私は夜中に神経が逸脱してしまいそうな感覚のときでも、正気を保つことができる気がします。アイスはエネルギーの流れの中にあるです」

 

軽水炉の熱を冷却水で冷やしてるようなもんじゃないのそれは」

 

「暴走を抑えるにはやはり必要とも言えます」

 

「そんなこと考えながらアイス食べてんの?」

 

 

 

 

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